Le Journal de Nori
2003年8月13日 水曜日   スカイダイビング

とうとうこの日が来た。 と言っても、ジャッジメントディとかそういう大げさなものではないのだが、私にとっては、それに等しいものだ。 空を飛ぶのだ。

スカイダイビングは、長年の夢でもあった。 実際、過去、2回試みようとした。 一回目は、スペインの北。 バルセロナの友人宅から、早朝、車を飛ばして2時間、行ってはみたものの、大雨で断念。 二回目は、アメリカ、ニューハンプシャー。 マサチューセッツ州に住む友人宅から、車で2時間半。 到着したら、風が強すぎて、セスナを飛ばせなかった。。。


こんな悔しい思いをして、何年もが過ぎた。 
実は、このスカイダイビングは、2年前のだんなからの誕生日プレゼントである。 なぜ2年前にしなかったか?? 妊娠していたのである! しかも臨月にさしかかろうとしていたときだ。 「世界初、臨月の妊婦スカイダイビング!」で有名になったかもしれない。 でも私は、名声を捨ててでも自分の腹の子を守ることを決心した。 



子供を産んだ後は、子育てに専念。 これも妊娠中に、「子供を産んだら絶対しよう」と決めていたことだが、目の手術だ。 手術と言っては大げさに聞こえるが、近眼のレーザー手術のことである。 アメリカでは、両目で、500ドルくらい、と聞いていたが、日本では、馬鹿高い。 フランスで受ける勇気はなかったが、車を買ったときの、保険屋の兄ちゃんが、ここトゥールーズでその手術を受けたと言う。 しかも、その先生は、眼科においてあまりに有名で、最初の検診でさえ予約をとるのに2ヶ月は待たなければならない、という。 
いくらしたのか聞いてみると、片目で、600ユーロから700ユーロ(1ユーロ=約130円)だと言う。 日本で受けるよりははるかに安い。
しかもそこの保険屋は、オフィスの中で3人が受け、3人とも満足だと言う。 よっしゃ、いって見よう。 


スカイダイビングも、目がよくなってから、コンタクト、眼鏡なしで飛びたい! 手術が先だ。 予約を取ってから待つこと待つこと、診察の段階になって待つこと待つこと。 それから手術の日まで待つこと待つこと。 手術の待合室に入って待つこと待つこと。 10人が同じ予約時間だ。 そんなのありか。 診察の段階では、全部終えるのに2時間以上かかった。 30人もいっぺんにするからだ。 診察された時間は、一人当たり10〜15分くらい。 しかも、先生が何人もいてたらいまわし状態だ。 とにかくこの国では「待つこと」を覚えさせてくれる。 ちなみに手術、片目686ユーロだった。

無事、片目が終わって1週間後に、両目が終わったと思いきや、なんだか右目がよく見えない。 全てが2重に見えるのだ。 本を読むのさえつらい。 今度は、その旨を伝え、診察を受ける。 「んー、傷口がうまくふさがってないようなので、もう一回手術しましょ。」
でも、一回目の手術より5ヶ月はおかないといけないと言う。 待つこと待つこと・・・・・。

そして、無事手術も終わって、スカイダイビングができるように。 最初の予定では、ここトゥールーズから車で1時間ちょいのところに、ポー(Pau)というまちがあり、そこでしようとしていたが、アメリカのほうが安い、と言うことで、今回のアメリカ旅行まで待つことにした。


緊張の前夜。 
と言ってもあまり緊張していると言うわけでもなく、すやすや寝ていたが、龍ちゃんが!!! 騒ぐのだ。 暗い中、ベッドの上で私を探し、ミルクをやっても、抱いても騒ぐ。 終いには、指を指して、「あっち」へ行きたい、と言う。 部屋を出たいのだ。 私は、龍ちゃんを抱えて、ベッドから降りようと膝立ち移動をする(膝をついて横ばいで歩いた)、だんなは音も立てずに寝ている。 とそのときだ!! 私は、龍ちゃんを抱えたまま、ベッドから落ちたのだ! 

落ちている瞬間と言うのは、スローモーションになるようにできているのか、冷静になる。 龍ちゃんを床に叩き付けないように!と私は体をひねる。 思いっきり左膝と、左ひじから落ちた。 しかも金持ちの姉さんを持つ、と言うのは、なぜかベッドの高さが普通より高い! マジで痛かった。

翌朝、膝が完全に曲がらない、痛い、ひじは、皮がめくれて、「汁」が出ている。 が、こんなところで、長年の夢を見過ごしてたまるか。 龍ちゃんをしばし恨みながらも、予約もしているし、行くことを決心した。


だんなは私のことを心配するが、私は、私がいなくなる間、龍ちゃんのことを心配してくれ、と思った。 龍ちゃんはママなしでは生きていてない。 

スカイダイビングは、18歳以上でないとできない。 もちろん私は十分に最低年齢に達してはいるが、体は、アメリカの18歳サイズには達していなかい。 一番小さいスーツを着せてもらっても、その上につける黒いもの(なんて呼ぶんだ?)をつけてもらってるとき、「んー、ちょっと君は小さすぎるねえ」と言われた。 


さあ、いよいよ飛ぶぞ! 二十歳くらいのときは、自分だけで飛びたかったが、30をも過ぎると現実がもっとよく見える。 怖いのだ。 だから、インストラクターと一緒に飛ぶ、テンダムジャンプにした。 

飛行機に乗りに行く。 龍ちゃんはそんなママを見て叫ぶ。 「ママー、ママー、ママー、ママー!!!!!」 「ごめんね龍ちゃん、すぐ帰ってくるからね。 パパ、しっかり面倒みいや。」

そして飛行機は飛び立っていく。 座席も、扉もない飛行機に、パイロットを除く、計6人が寿司詰めになる。 ちょっと、前の人、あんたの重たいパラシュートが、私の左ひざにのしかかってるって。 ほんまに痛いねんけど。。。。。と、身動きが取れないので、心の中で叫ぶに過ぎなかった。

ダイバーズコンピューターの針が9000フィートを超えた。 3000メートル近い。 もうすぐ飛ぶぞ! 
インストラクターが、私と、肩の部分、腰の部分、計四ヶ所でつなげる。 カメラマンが先に飛行機を降りる。 そして私たちの番だ!!


   
すごい風だ!!! 息ができない・・・・ことはなかったが、とにかくすごい!! カメラマンに笑いかけるときにも、スマイル、でも、口は、閉じたまま! そんなすごいスピードで落下中に、口をあけたらどうなるか、想像していただけるだろう。。。。 そんなことを頭の中で考えると、口をあけそうになったが、ぐっと、こらえた。 


    
そして、インストラクターが、私の手を胸の前で交差させ、パラシュートを開くぞ! と言う合図だ。 
開いた!!  これまたすごいスピードで、上空に持ち上げられていく! 今度こそ息の仕方が分からない!! と言ううちにパラシュートは開ききって、今度はゆっくりと地上へ降りていくのである。

もう興奮の世界だ。 感極まって叫んでみる。 楽しすぎる!! インストラクターの操縦で、右へ左へ。 「360度、用意はいいかー?」 「イヤー!(Yeah!)」 360度、ぐるーっと旋回する。 楽しすぎる!!


あっという間に、足元には地上が近づいてきて、そんな夢のひと時は幕を下ろしたのである。
龍ちゃんとパパが、そこで待ってくれていた。 「龍ちゃん、ママ、生きて帰ってきたよ。」 涙ぐましい瞬間だ。   


今年ももうすぐ、私の誕生日がやってくる。 だんなは聞く。「誕生日、何がほしい?」
「スカイダイビング。今度は一人で。」 迷いもなく答えた私に、パパはただ笑顔で答えた。 その笑顔が何かしら引きつって見えたのは私だけだろうか。。。。


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