Le Journal de Nori
9月23日 金曜日   駅で

腹が立つ、腹が立ってどうしようもない。
でも、私じゃどうすることもできない・・・。

今日、午前はドイツ語のレッスンだ。
私は車に乗って、この町の駅に行き、そこから電車に乗ってフランクフルト市内の学校まで行く。
もちろん、龍ちゃんを連れて。
そこの学校には小さな子供をつれたドイツデビューの日本人のお母さんの為にベビーシッターさんがいる。
めちゃめちゃありがたい。

うちの町の駅には2つ入り口がある。
駅正面と、駐車場がある裏側である。

私は車で行くので、いつも裏側の入り口を利用する。
券売機が2台並んでいて、そこには地下へ降りる階段がある。

フランスではメトロ(地下鉄)の利用者に犬を連れている人がたくさんいた。
ここドイツでは自転車で乗り込む人が多い。
そのため、各階段の端には、自転車が転がせるようにスロープが着いている。
これは、自転車利用者にとってまさしくありがたい代物だ。

うちの町の駅の階段にももちろんスロープが着いている。
金属製で、階段に後から取り付けたもので、線路のように2本平行して着いている。
なぜ2本なのかは分からない。

そして今朝、いつものように車を駐車して、切符を買っていた。
そこに、3人の20歳そこそこの若者がやってきた。
男の子1人、女の子2人だ。
そのうちの女の子の一人は車椅子に乗っていた。

彼らは、そこの階段を見て、かなり驚いていた。
エレベーターはないのか。。。?

その間にドイツ人が2人その階段を利用した。
何も言わない。

早く電車に乗りたい龍ちゃんは階段を一人で降りていった。
そしてママを呼ぶ。

彼らは、自転車用のスロープに車椅子を乗せようとしていた。
見切れなく、思わず、「ちょっと待った!」
と私は言った。

確かに車椅子用にっぽいけど、車椅子の前輪と後輪の幅は違う。
前輪がはまったからといって、後輪がはまるわけがない。
しかも、その階段は30段はあるだろう。
そのまたしかも、一段一段が、日本の一段のように薄っぺらではない。
その倍はあると考えてもいいだろう。
彼女がかなりのスピードで転がっていくさまを想像してしまった。
見ていてほんとに怖かった。

龍ちゃんはまだ私を呼ぶ。

表へ行く回り道はかなり遠くまで行かないといけない。

ここで私はつたないドイツ語で、
「運ばな、あかんよ!」
といって手を貸した。

もう一人の女の子が車椅子の後ろから、男の子と私は横から車輪の部分と周りを。
「せーの!」

驚愕した。
こんなに重たいとは思っていなかった。

私は「ちょっと待って」といったんおろして、わたしの持っていた荷物を階段の一番上に置いた。
ドイツ語のテキスト、エクササイズノート、ノート、それから龍ちゃんが電車の中で飽きた時用に本を何冊か持っていて、しかも龍ちゃんのおやつの入ったバッグも持っていた。
ちょっとでも負担を少なくしたかった。

そしてもう一度!

車椅子自体も重たいけど、その上の女の子は日本人のそこらの女の子よりはるかにでかい。
ドイツサイズだ。

やっと階段の下にたどり着いた。
はっきり言って死ぬかと思った。
でも、それよりも落としてしまったらどうしようかと、そっちのほうが怖かった。
彼らは「ありがとう。ほんとにありがとう」
と私に礼を言うとホームへ向かった。

各ホームに上がるにはエレベーターがある。
一安心だ。

その間、龍ちゃんは階段を上まで上り、荷物を運ぼうとしていた。
小さい龍ちゃんにはかなり重いものだ。
私ももう一度上に上り、荷物をとって、下へ降りた。

そして彼らが見えた。

忘れていた!
エレベーーターに行くまでに、5段ほどの階段がある。
上らないといけない。

のぼりで、しかも5段だけだったので、後ろ手に一段一段上がったようだった。
ほっとする。

あれ?
彼らは電車に乗りたいんじゃないの?

龍ちゃんはホームに行くのにエレベーターに乗るのが大好きだ。
でも今日は違う。
エレベーターが、故障していたのだ。

私は頭がくらくらした。
こんな体力を使ったのも久しぶりで頭の中がほんとに蒼白していった。

彼らを捕まえて、「駅の人に言ったほうがいいよ」
といいたかったが、彼らは早々と表口から出て行った・・・・。

この町には温泉がある。
この温泉の効用目的で、体の不自由な人が多い。
近所の公園に行っても、よく車椅子の人とすれ違う。

ドイツは、歩道がかなり広い。
車椅子の人、ベビーカーを押す人、彼らのことをよく考えてるな、と思う。
特にフランス、トゥールーズは古い町で、龍ちゃんがまだベビーカーに乗ってたころ、町を散策したくても、歩道が狭すぎて、車道を歩かないといけなかった。
しかも交通量は多い。

だからドイツはかなり体の不自由な人、ベビーカーを押す人などに親切な国だと思っていた。

この町の表玄関だけはそんな顔をしている。

家に帰って、この話をだんなにした。
「駅の人にいわなあかんよなあ。」
わたしのドイツ語能力じゃまだいえない。
だんなは「市役所にいかなあかんよ」
といった。

私は思った。
駅に言えば、「市がかかわることだから」
市役所で言えば、「国鉄に言ってください」
といわれるような気がした。

ドイツ語をまだ話せない自分にもほんとに腹が立つが、それよりも、こういうことはどうしたらいいのだろう、といても経ってもいられない気持ちで、腹が立ってしょうがなかった。
と同時に、悲しかった。

みんなの住みよい環境になるのはいつだろう。



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