![]() 11月5日 金曜日 電車の中で |
今日もドイツ語のレッスンである。
いつものように自宅から車に乗って、電車に乗り込む。
うちの町の駅から一時間に4本の割合でフランクフルトまで行くことができる。
そのうちの2本はここが始発で、2本はフランクフルトから遠いほうの町から来る。
今日乗ったのは、うちの町が始発のだ。
ホームに着いたらもう電車は着ている。
乗った。
電車はまだがらがらに空いている。
遠めにチラッと立ってる人が見えた。
あまり気に留めなかったが、浮浪者のように見える。
こっちを見てるような。。。。。
パリではメトロ(地下鉄)にたくさんホームレスの人が乗ってくる。
くさいの一言だ。
ひどいときは本人は見えなくてもにおいだけがそこらじゅう立ち込めている場合がある。
ドイツの電車ではまだそんな人は見たことがなかった。
フランクフルト中央駅の近くを歩いていたときにそういう人たちが結構いたことはある。
そんながらがらに空いている電車の中を彼が歩いてくる!
我々の座ってる席を通り越して、新聞が転がっていた席に着いた。
通った瞬間、やっぱしくさかった。
何か独り言を言っている。
でも知らん顔しとこう。
そして何を思いついたのか!
席を立って、こっちに来た!
フランクフルトへ行く、私たちが利用する電車の席は4人ごとのブースになっている。
私らが座っている目の前に座った!
うわっ
あっちいってくれーーーーー!!!
くっさー!!!
龍ちゃんに向かって、「名前は何?」
と話しかける。
こんな初歩的ドイツ語会話は私にだってできる。
が、ここはまったくドイツ語を解さないことにしよう。
私は彼を気にも留めない振りをして、しきりに龍ちゃんに話しかけていた。
そんな時、隣町から電車が着いた。
フランクフルト方面に行く人はみんなこの駅で乗り換える。
すっごい人が乗ってきた。
みんなもおっさんを見る目つきが違う。
だ、誰か助けてくりいいいー!!
それでもそのおっさんは気にも留めず、龍ちゃんに話しかける。
向かいに止まった電車を見て、龍ちゃんは、「でんしゃ!」
とドイツ語で言う。
あ、あほー、ドイツ語はまったく分からんはずやったやろー。
電車が動き出した。
龍ちゃんはそれでも英語で電車にかかわることを言う。
おっさんはそんな龍ちゃんがかわいいのか、龍ちゃんの頭を触ろうとする!!
や、やめろおおおおおおー!!!
触った!
ぐおおおおおおおー!!
かなり怖い顔をしていたのかも知れない。
おっさんが私に向かって、「何怖い顔してんねん、この子の相手してるだけやのに」
とでも言ってるようなそぶりを見せた。
龍ちゃんに、日本語で、「おっさんくさくて汚いから、触らせたらあかんよ!!」
でも、私は心を鬼にして自分に言ってみた。
「きっと彼もどうしようもなくて、ホームレスになったに違いない。ちょっとくらいやさしくしてもいいのでは??」
もう自分の中に天使が住んでいるとしか思えない。
げええええー。
もうさわるなああああー!!!
私の龍ちゃんにさわるなあああああーーーーー!!!
龍ちゃんは理解している。
その手をそっとかわした。
自分の中に天使がすんでいるというのは、まやかしだった。
こんなおっさん、切符なんか買ってないに違いない。
コントローラーが来て、切符チェックしろー。
もちろんこういうときこそ来るわけがない。
うわー、今度は龍ちゃんのお尻、さわるなー。
もう性的虐待者扱いである。
次の駅に着きそうだ。
「ここで降りようか、でもここで降りたら、また15分待たないと。。。」
次の駅までほんの5分くらいだが、死ぬほど長く感じた。
着いた。
私は龍ちゃんに、「降りるよ。」
といって、龍ちゃんを連れ、奥の方まで移動した。
席がほっとんど開いてない。
それでも一番端のほうのブースになってない横並びの席はあった。
そこにとりあえず座る。
おっさんも私らが降りてないのは分かってるはずや。
来たらどうしよう。。。。
で、次の駅に着いた。
そして出発。
ゆっくり発車する電車の中から、あのおっさんがホームにいたのが見えた。
何故かとてもさびしげに見えた。
かわいそうなことをしたのかもしれない。
でも、私にはどうすべきか分からなかった。。。。
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